モジュール生産方式の構築 その8|マス・カスタム生産に改善

モジュール生産方式の構築やマス・カスタマイゼーションの考え方について、専門的且つ分かりやすい解説を提供するコラム。全16回でお届けします。

3.同期ライン・セルの設計
3-1 マス・カスタム生産に改善

(1) 時間分析と時間値の類似性分析

通常、同期ラインの編成は次のような手順で行う。

改善対象製品の単位当たりの加工時間と1回当たりの段取り時間をビデオスタディにより設定する。
ここで言う段取りはラインを止めて行う内段取りのことである。

作業が複数人員、複数設備で行われる場合は連合作業分析の結果から配置人員、設備台数と時間値を求める。

この中で工程の類似性に加え、時間値(段取り時間・加工時間)の類似性がある品種を同一生産ラインで同期化する。

時間値の類似性のない品種の場合、類似とするための改善を行う。

■同期生産をする工程範囲を選択する
ロット、サイクルタイム、が揃う工程範囲を同期化可能工程として、開始工程から終了工程までを選択する。

同期化範囲に選択した各工程の時間値の中で最大値がネック工程である。そこで、各工程のサイクルタイムをチェックし、ネック工程のサイクルタイムがタクトになる。

■同期時間値のチェックと改善
組立作業のような人手中心の作業は人の作業時間、機械中心の作業は機械時間で同期化のシミュレーションを行う。

人と機械の混成ラインの場合は、人と機械の配置人員、台数の両方を、時間値にはネックとなる方を検討する。

同期化する範囲で予定月産量=<可能月産量の等式が成り立つよう、また下記の編成効率が90%以上になるように改善する。通常はネック工程のサイクルタイムを縮める改善を行う。

編成効率= Σ各工程のサイクルタイム / ネック工程のサイクルタイム×工程数

以上で加工時間の同期化はできても、小ロット生産では、段取り時に1工程でも長い段取り時間がかかると、それが終わるまでラインが稼動しない。

そこで、小ロット品種は段取り時間の同期化を検討しなければならない。

一般のライン編成では以上のステップで十分であるが、マス・カスタム生産では次の「変化は後工程」の考え方を織り込む。

(2) 工順表(ネットワーク)の作成

「変化は後工程」の改善は図表17のように作業相互間の時系列的な順序制約を工順マトリックスで検討する。

図表17上の縦軸の現在の作業と同じ順に横軸にも作業を取り、現在の作業を始めることができる直前の作業No.を「終」欄に記入する。いつ始めてもよい場合はブランクになる。

そして、現在の作業を終了していなければならない直後の作業No.を「始」欄に記入する。いつ終了してもよい場合もブランクになる。

現在の作業の制約条件を「*」で示す。
「*」の間隔が長ければ長いほど制約条件がないことを示す。

一般的に、組立系は制約条件が少なく、装置系は多いのが普通である。

マス・カスタム生産は混流生産を前提にしているので、品種が変化したときの作業の変化を図表17下の変動種類の列でチェックする。

作業内容と時間値に変化があれば、その種類数を単位作業別に入力する。
図表17下では上から1,2,2,5,1,5,5・・・・の数字が入力されている。

ちなみに、1は変化のないことを示し、5は品種が変わると作業量を示す時間値が5種類変化することを示している。

変化を少なくするには昇順(1から少ない順)に並び替える。
しかし、図表17上の工順マトリックスで入力した工程の順序制約から昇順に並ばない場合は、変化する工程を後工程に持っていくように改善する。

こうして、変化をできるだけ後工程に持って行くが、完全に改善できる訳ではない。

図表17

(3) 工程の変動要素のレンジ化・系列化

多品種を同一ラインで生産すると、品種ごとに工程、時間の変化が出る。
品種によって工程別の加工時間が変わる変動要素をチェックし、レンジ化・系列化の検討を行う。

レンジ化・系列化の目的は、寸法、構造の変動のさせ方を、数式、標準数(等比数列、等差数列)などにしたがい設定することで、設計と製造工程を合理化することである。
この点が、設計モジュール化と生産モジュール化の整合性をもっとも取りたい所である。

レンジ化とは1つのユニットがカバーする性能の範囲(レンジ)のMINからMAXを考え、ユニットの種類、寸法を抑えることである。

系列化とは製品・ユニット・部品に要求される性能、機能、寸法などを整理し、一定の規則性を持たせることである。
変動のさせ方を数列に乗せたり、性能、寸法の等差化、等比化の検討を行う。

図表18の例では、頭部ロータリーと頭溝のロータリー工程では直径4種類が、二面幅以降の工程は長さ2種類が変動要因である。

図表の直径・長さの列を見るとラインを流れる製品の中で最大と最小の直径・長さが分るので、これに対応する設備能力のレンジ幅を決める。

レンジ幅が大きいと設備能力の有効利用度を低下させる要因となるので、その変動幅は小さい方が望ましい。

つまり、最大の直径と最大の長さが生産可能な設備を導入すると、平均的には最大能力を使わずに稼働させることになるからである。
そこで、最大を低減するなど設備能力を落とす改善をする。

これについては他にも方法があり、「3-2コストの安い設備の選択」で述べる。

図表18

(4) 個別受注品をモジュール生産

「1から作る個別受注でも、設計モジュール化や生産モジュール化はあるのか・・・・」の疑問に答えておこう。
1から作る個別受注だからこそ1から作らない工夫をすることである。

図表19

図表19はパイプ鉄塔の個別受注例である。
鉄塔は鉄板を切断⇒成形⇒溶接して作った円錐形の部品を3本~5本つなぎ合わせて作る。

10m~20mの鉄塔は1塔々々設計が違い、取り付け部品も異なる。
しかし、鉄塔の最下部の円錐形部品はどれも400×1700の定尺材から切り出すので、直径は違っても高さは同じ400である。

そこで、受注頻度の高い直径の円錐形部品を標準品として中間財を持つことにする。
直径を平均150±50の範囲(1σ:シグマ)にすると、統計上68.3%は標準品でカバーできる計算になる。

その間を20間隔で系列化すると6種類になる。この部品は最も仕事量が多いので、受注変動のバッファ在庫として使うことができ、さらに、作業量の平準化とリードタイムの短縮を図ることもできる。

このように、個別受注品であっても生産モジュール化は可能である。そのとき、すべての部品・ユニットをモジュール化しようと考えないことである。

<執筆者>
MEマネジメントサービス 橋本 賢一


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