工作機械関連技術者会議 企画副委員長 インタビュー2

2021工作機械関連技術者会議 企画副委員長の東京電機大学 工学部 機械工学科 教授の松村 隆 様に工作機械業界の動向、今回の本会議の聴き所をお伺いしました。日本能率協会の勝田・高士がインタビューいたします(以下 敬称略、役職当時)

東京電機大学 松村教授 インタビューその2/工作機械業界が抱える現在の課題と10年先を見据えた展望は? 

(高士)
工作機械業界が抱える現在の課題と10年先を見据えた展望について先生の見解をお聞かせください。

(松村)
現在、加工の分野では若い人材が減りつつあります。国内の機械系学科のほとんどは材料力学、流体力学、機械力学、熱力学の研究室はありますが、加工の研究室は必ずしもあるわけでありませんし、近年では少なくなっています。

現状では、AI、ロボット、バイオの分野に注目が集まっているため、どうしても加工の分野の若手人材の育成は難しい状況です。一方、製造業では新材料の開発にともなって加工のニーズが依然として高いです。

しかし、人材が少ない上に、研究や技術開発部署だけでなく、加工現場でも熟練者の技能をいかに伝えていくか課題となっています。すなわち、10年先における技術開発と業界の発展は、若手人材の育成とともに技術や技能の伝承が鍵となるものと思います。

(勝田)
基礎工学がなければ産業界におけるデジタルの活用や発展は難しいですよね。

(松村)
そのとおりです。私が委員長をしています精密工学会切削加工専門委員会では毎年講習会をしていますが、切削の基礎を学びたいという企業の方も多くいらっしゃいます。これは加工のデジタル化の前に、その基礎や基盤の足固めをしておきたいというニーズがあるものと思います。

(高士)
そうした課題を乗り越えて未来へ進んでいく必要があるのですね。

(松村)
昨年、日本工作機械工業会が主催する大学・大学院生を対象としトップセミナーにて、夢のある工作機械の未来のあり方として、私は「スーパーマザーマシン」について話をさせて頂きました。

スーパーマザーマシンの具体化は、若い世代の技術者に託したいところです。そのためには、現在の技術の延長線で考えるのではなく、もっと別の視点や発想から新しいものを取り込んでいけるようになってほしいです。それにはやはり基本的な内容を押さえておく必要があると思います。

20年後、50年後を見据えた形で工作機械はどうなるのか。技能者や設計者の意図を理解し、それを反映できるAIの技術に期待したですね。その頃には、それをAIと呼ぶかどうかはわかりませんが。既に話をしたように、AIを活用するための課題はたくさんありますが、機械自身が自律的に判断し動作できることは、近い将来可能になるものと信じていますし、それは製造業にとって大きな進歩になると思います。

(高士)
そのためには他の課題もありますか?

(松村)
例えば、加工中のトラブルを自己判断するような課題が挙げられます。そのために機械自体が加工トラブルを事前回避するためには経験が必要です。こうした技術が確立できれば、安定した生産ラインとなり、人の介在はより少なくなるでしょう。

(高士)
無人化ラインもあり得るのでしょうか?

(松村)
今から30年前に、日本機械学会のFA部門(現・生産システム部門)で、「完全無人化工場は可能か」ということについて議論がありました。しかし、その時の多くは不可能ではないか、という回答でした。余談ですが、当時は、無人化工場ができれば地下に工場を建設し、その上の地上に病院や商業施設があるようなスケッチもありました。

ここでは、無人化工場に対する進化や成長という点で疑問が投げかけられていました。「ものづくり」は、我々人類にとって創造的な活動だと思います。この創造的な活動のおかげで、これまで、ものづくりや工場が絶えず改善を重ねて進化したわけです。これを全て無人化し、機械やシステムに委ねた場合、生産ラインが成長するかどうかは疑問です。すなわち、できてしまえば完結するような生産ラインとなり、10年後には時代のニーズに対応できず、使われなくなるように思います。

これは、AIが自身のシステムを成長させられるか、あるいは、AIが本当に人にとって代わるかわることができるのか、という議論に行きつきますね。
私はものづくりの成長には、必ず人の介在が必要と思います。人と工作機械やシステムが協調することによって、絶えず成長し続けものづくりが維持できるものと思います。

(高士)
人と協調する工作機械への期待が高まりますね。

(松村)
結局、もとの議論に戻ってきますが、そのような技術の実現には工作機械の機能の高度化が求められます。現状では合理化のためのデジタル化は図れても、新しい発見的技術や自己制御のための工作機械ができるには、まだまだ時間が必要ですね。それは、対象とする加工現象がまだ十分に解明されていないからです。これから先、この点が克服できればより良いものになっていくでしょう。

(勝田)
克服するにはデジタルの技術だけではなく、ソフト・ハード両方の技術進歩やそれをマネジメントする人間の成長、進化も必要不可欠になってくるのでしょうか?

(松村)
私もそのように思います。機械が人間に対して情報提供し、人がその得られた情報を判断していく形をとっていかなければなりません。すなわち、人と機械が共に成長する、共に支援しあう体制が必要です。ですから、ものづくりに「人」は必要なのです。こうしたメッセージが会議を通じて伝えられるようになるといいですね。

(高士)
これは工作機械業界だけにとどまらず、日本の産業界全体に言えることですね。

松村
自動車技術界も2050年の自動車をどうするか、将来動向を考えています。2000年になってから、自動車技術会生産加工部門のワーキングでは、多くの夢のある将来の自動車について議論されていました。

その頃に議論されていた自動運転については、当時はまったく誰も実現できるとは考えていませんでしたが、20年後にはこうした夢物語が現実になるのです。
20年後、30年後の工作機械はどうなっているのか。工作機械においても夢のような技術を考えていく必要がありますね。

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