旧第一銀行横浜支店(元横浜銀行本店別館)「JMAものづくりポータルコラム」

 横浜をタテに抜く本町通りは、第二合同庁舎(旧生糸検査所)の前で、右:みなとみらい大通りと、左:桜木町駅に出る本町通りに、Yの字に分かれる。
 そのYに分かれた間にどっしりと鎮座しているのが、現在はUR(独立行政法人都市再生機構)が運営する高さ119mの超高層オフィスビル、アイランドタワー。
 本町通りを桜木町に向かって北上すると、Yの字に分かれるその正面に、バルコニー付きの石造りのギリシャ建築風の建物が見えてくる。ビル群の中に突然現れるその存在感は圧倒的である。
 アイランドタワーの超高層オフィスビルの低層階部分にはめ込まれている建物は、2,3階を通して吹き抜けのトスカーナ風の大オーダーのバルコニーを持つ、昭和4(1929)年に建てられた第一銀行横浜支店で、1980年以来、横浜銀行本店別館として使用されてきたものだ。
 
 場所は、生糸検査所、帝産倉庫などの、向かい。
 平成14(2002)年、生糸検査所などのある北仲通り地区の地域開発に伴って、170メートルほど離れた所にあった横浜銀行本店別館のバルコニーなどを含む正面部分を、ジャッキアップして移動させ、現在の位置にもってきて、残りの分解・復元して改装し、超高層のオフィスビルの1階にくっつけた。
 バルコニー部分は、旧第一銀行当時の建物をそのまま移動させたが、残りの部分は、かつての意匠を活かして、石造りの重厚な構えで大きな窓と付け柱のようなデザインを復元した。そして、裏側に隣接して近代的な超高層オフィスビルを建設した。
 その意味では、正面の先端部分は、歴史的な建造物だが、残りは、復元されたものと、まったくい新しい部分を複合した建物ということができる。バルコニー部分の設計は清水組の西村好時、高層部分は槙文彦。
 
 完成させたのち、平成15年(2003年)に横浜市の歴史的建造物に認定されている。
 復元された部分は、2階吹き抜けのホールになっており、現在はヨコハマ創造都市センター (YCC) の施設として、通常はカフェとして営業、また結婚式場などの催事などにも利用されている。ウエディングドレスがよく似合う施設でもある。
 ロケーションとして、みなとみらい線の馬車道駅に直結していて便利だが、三角形の両側を交通量の比較的多い道路が走っており、置き去られた島のようにぽつんと離れて建っていて、周囲と隔絶された、とってつけた感が否めないのは残念だ。違和感の原因は、存在感が大きすぎて、なかなか周囲の建物に溶け込めないことにあるのだろうか。

 本町通りには、典型的な銀行建築として用いられている、神殿風の大オーダーのファサードをつけた銀行がたくさん並ぶので、違和感がなさそうに思えるが、難しい。さすがにギリシャ神殿風のバルコニーは、別格である。周囲とは隔絶されたデザインなので、Yの字の島に持ってきたと思われる。それでもあまりの存在感に浮き上がっていて、ここだけが別世界という印象を受けてしまう。
 正面の1階の円形に出たエントランスにある3つの出入り口ドアが、オープンなイメージを出している。2階部分が、外に向って開かれたバルコニーになっているのが、利用される機会がなくて残念な気がする。前のスペースがあるので、何か利用したらどうだろうか。
 いま、このビルの裏に、新しい横浜市庁舎が建設中だ。出来上がったらどんな風景になるのか、楽しみでもある。


大オーダーのバルコニーを持つ正面は昭和4(1929)年に建造された。後ろの半分は解体し復元したもの。奥の119メートルの高層オフィスの1階にはめ込まれた。


内部は、床も柱も壁も天井も乳白色。3階までをオリジナルの様式をそのまま生かして吹き抜けに復元。まるでカトリック教会のようだ。カフェやイベントスペースとして利用されている。


正面は三方に出入り口を配して石造りながら、オープンなイメージを醸している。扉の装飾や窓の周辺なども、シンプルな意匠だけに落ち着いている。

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執筆:梶文彦
写真:谷口弘幸

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