横浜船渠1号ドック(日本丸メモリアルパーク)「JMAものづくりポータルコラム」

 ■全長150メートルの大型船舶用ドック
 2号ドックに続いて明治32(1899)年に完成したのが1号ドックである。現在は水を引き込んで帆船日本丸の展示ドックとなっている。2号ドックは復元にあたって若干位置が動かされたが、1号ドックは、もともとあった位置のそのまま残され、水をたたえて練習用帆船・日本丸の繋留地として使われている。
 繋留といっても、ドックに入渠し浮上した状態で保存されており、付属する帆船日本丸メモリアルパーク、横浜みなと博物館として多くの観光客を集めている。
 1号ドックは、最終的に3基(3号ドックは解体された)作られたドックの中で、一番手前、外側にあるドックで、着工する際に、工期が短く早く完成する方から先に作ったために、内側にある2号ドックが先に完成し、続いて大きな1号ドックが作られた。それだけ、修船施設が待たれていたということでもある。
 順番から1号、2号と作られたように思われるが、1番、2番というのは作られた順番ではなく、最初にH.S.パーマーが新港計画で設計した際に大きいドックから順番に1号、2号と番号を付けたためだ。
 
 1号ドックの大きさは完成時で、長さ142m、幅(渠口下部):22.7m、深さ(渠口満潮時)8.8m。作られた当時は、戦艦大型化の時代の中でも、先を身越してかなり大きめに作られたが、それでも予想以上に船舶の大型化が進み、大正期になって、長さが147mへと渠頭部の拡張工事が行われた。
 石造りの構造などはほとんど2号ドックと変わらず、石材は真鶴産の本小松石、新小松石、六が村石。ブラフ積みも同じである。
 2つのドックは平行にではなく斜めに渠口が寄り添うような位置で作られているが、これは船舶の導入路の浚渫を効率的に利用するために、この位置に設計されたもので、3号ドックも含めて、ドック入りする船舶が1本のルートで入港し、渠口に近づいたところで、コースを分岐することで、浚渫費用を安価に済ませる工夫でもあった。
 
 ■海の貴婦人――航海練習用帆船・日本丸
 日本丸は、昭和5(1930)年に、公立商船学校の専属の練習船として姉妹船「海王丸」とともに建造された練習帆船だ。
 建造以来、約54年間にわたって、商船大学航海科実習生の帆船による遠洋航海練習船を務め、戦後は遺骨収集や、海外在留者のための帰還輸送航海などに従事し、地球を45.4周する距離(延べ183万km)を航海してきた。育てた実習生は、11,500名にも上り、遠洋航海で訪問した国は100ヵ国を超え、海外親善にも大きな役割を果たしてきた。
 大型帆船の設計をしたことがない日本は、イギリスのラメージ&ファーガスン社に設計を依頼したが、建造したのは川崎造船所(神戸)。エンジンは、池貝鉄工所に依頼、川口工場で試行錯誤の末完成した、初の船舶用大型ディーゼルエンジンは54年間動きつづけ、世界一の稼動年数記録を打ち立てた。
 
 しかし老朽化が進み、昭和59(1984)年、船員養成の任務を「“新”日本丸」に引き継いて引退した。保存、係留地として多くの都市が手を挙げる中、横浜市が横浜みなと博物館を新設して獲得し、1号ドックをメモリアルパークとして展示・保存することになった。
 姉妹船の海王丸とともに、その美しい姿から、「太平洋の白鳥」や「海の貴婦人」などと世界的にも知られている。今は新日本丸がそれを受け継いで活躍している。
 現在、1号ドックに係留されている初代日本丸では、年に数回、ボランティアスタッフによって帆を広げてたたむ総帆展帆や、お祝いのときに国際信号旗(船の通信に使用する旗)を掲揚する満艦飾などが行われている。現在帆の枚数は全部で29枚、100人に上るボランティアがマストの上まで登って、帆を広げ、たたむ様子などを見ることができる。満艦飾は祝日には行われている。
 詳細は以下、https://www.nippon-maru.or.jp/ でどうぞ。
 このドックの奥に、水陸両用バス「スカイダック」の乗り場がある。バスが道路を走ってそのまま海に入る。湾内を一巡するので、海から横浜の光景を楽しむのもありかも。


1号ドックは、いまはメモリアルパークとして、航海練習船日本丸(1930年進水)を保存している。


昭和5(1930)年に作られた練習用帆船・日本丸。年に数回、ボランティアにより帆を広げる総帆展帆や、祝祭日の満艦飾などのパフォーマンスが行われている。帆を広げたその美しい姿から、海の貴婦人と呼ばれた。


ドックの本体部分は小松石が使われているが、大正時代に延長された渠頭部分はレンガ積となっている。


ドックを渠口の海側から見たところ。扉船で水がせき止められている。


1号ドックと2号ドックの間にある蒸気稼働の排水用ポンプ。カバーがかかっている。1899年イギリス製。89年間稼働した。排水時間を短縮するために、2台が設置されて、どちらも両方で使えるようになっている。



水陸両用バス「スカイダック」海のなかから横浜の光景を楽しめる。

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執筆:梶文彦
写真:谷口弘幸

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