2012生産技術者戦略会議特別インタビュー1|日本の生産技術者だからできること

2012生産技術者戦略会議(2012年10月19日(金))の開催前におこなったインタビューです。

日本の生産技術者だからできること

延岡健太郎先生 一橋大学 イノベーション研究センター長 教授

延岡健太郎先生

一橋大学 イノベーション研究センター長 教授

ご講演の「聴きどころ」を日本能率協会の安部武一郎がインタビューしてきました。延岡先生からの「生産技術者の皆様に向けたメッセージ」をどうぞ!

-まずは、先生のご研究テーマについてお聞きかせいただきたいと思います。

ものづくり企業の「価値づくり」というテーマです。
もともと、ものづくりの目的は価値づくりでした。
しかも、ものづくりをうまくやれば利益などの価値づくりにも自然に結びついていました。
ところが最近、ものづくりが価値づくりに結びつかなくなったので、 価値づくりを別に考えなくてはならなくなったということです。
それはなぜか?ということと、うまくいくにはどうすれば良いか?ということをテーマに研究しています。

-企業の「ものづくり」とは商品企画、技術開発、生産・製造も含めたものづくりですよね。
「ものづくり」による「価値づくり」には、どのような重要性があるのでしょうか?

世間ではあまり明確に言われませんが、企業の「価値づくり」は、 国全体、社会全体を良くしていく源です。
例えば、世の中にある10,000円の材料をうまくつかって、商品企画し、技術を投入し、生産することで、お客さまが100,000円払って手に入れたいという製品を作ったとします。 その100,000円と10,000円の差、90,000円をつくりだすのが「価値づくり」なわけです。 この価値から営業利益が生まれ、法人税となって、福祉や被災地にまわっていくのです。 また、研究開発費や給与にもなります。給与がたくさんでて、誰かがお酒を飲めば 酒税として世の中にまわっていくわけですね。

-なるほど。

つまり国の財政ともつながっていて、こうした社会の流れの原動力を持っているのが、 企業の「価値づくり」なのです。
ですから、企業の「価値づくり」は社会全体を良くするためにとても重要なものですが、 その位置づけがなぜかあまり明確でないですね、世間では。

-それで、ものづくり企業による「価値づくり」が重要になっているのですね。

そうです。

-ものづくりが「価値づくり」と結びついていないという難しさが起きているのは どうしてでしょう?

理由はふたつあります。
ひとつめは、競争があるからです。
常に競争によって商品価値が低下するということはおこっていましたが、 ここ20年程前から、競争が商品価値を台無しにしてしまうという影響力が とてつもなく大きくなってきました。
どんなに商品として素晴らしくても、 競合がほぼ同じような製品を作ることができる場合は、「価値」に結びつかなくなります。 例えば、薄型テレビも太陽電池パネルも商品自体はすばらしいものづくり力によってつくられている のですが、競争のために利益が出にくくなっています。

-ふたつめの理由はなんでしょう?

ふたつめは、お客さまが喜んで買う価値自体をつくるということが難しくなっています。
かつては、良い品質で商品をつくることが「価値」に結びついていました。 今は、「いままでにない価値」を作り出すことが必要になっています。

-どうすれば、ものづくり企業の力を価値づくりに結びつけることができるのでしょう?

ひとつには、持続的に差別化をはかる、独自性を持つということが挙げられます。
ふたつめは、お客さまの求める価値を提供するという意識を強く持つことです。

-それらは、学習すればできるようになることなのでしょうか?

簡単ではないですね。
日本のものづくり企業は横並びの競争が好きで、技術トレンドがあると同じ方向にいってしまう傾向が あります。本当は、他社と違うことをやるほうがリスクが少ないはずなのに。

-横並びの競争をしてしまうんですね。他にもありますか?

簡単ではないという理由は、企業に「価値づくり」をしてほしいと望んでいるはずの株主も 「なぜ同業他社がやっている領域に投資しないのか」と言ったりすることが多いからです。

-それは難しいですね。

さらに難しい理由は、経営者も他社と同じことをしているほうがリスクが少ないと思っていることです。
もし利益がでなくても、自社だけが悪いのではなく環境が悪かったと言い訳がしやすいのでしょう。

-お客さまが求める価値をつくるのは難しいですか?

消費財に関しては簡単ではありません。商品企画力も必要ですし、才能も必要でしょう。 つくるのも本当に難しい。
それでも、それをうまくやっている会社はあります。
そういった事例も少しふまえて、生産技術者戦略会議でお話したいと思います。

-是非お願いします。

一方で、生産財に関してはお客さまの求める価値はもっと明快です。
「機能がどれだけすぐれているか」ではなく「お客さまをどれだけ儲けさせるか」という 価値が求められるのです。 ある会社ではこれを「お客さまのそろばんをはじく」と表現しています。

-「お客さまのそろばんをはじく」ですか。わかりやすいですね。

このような企業は、利益も出しており、コア技術の向上と顧客価値の向上両方を実現しています。
生産財に関する事例も、生産技術者戦略会議でお話したいと思います。

-楽しみにしています。

ここまで話したことが「技術経営」というもので「技術を価値づくりに結びつける」経営です。
繰り返しになりますが、ポイントは2つあります。

ひとつめは、「いかに、うまく、ものづくりをやるか」です。
プロジェクトマネジメントや、品質、コスト、原価企画、IEなど、これまでも日本能率協会で 教育機会を提供してきたようなことですね。

ふたつめは、「いかに、うまく、価値づくりをやるか」です。
これには2つの切り口があって、ひとつには独自性があるかということ。
ふたつにはお客さまの喜ぶ、あるいはお客さまが儲かる価値をどうつくるか?ということになりますね。

-そうした切り口に生産技術者はどのように関係してくるのでしょうか?

生産技術と生産技術者は、2つの点で非常に重要な役割を果たすと思います。
それに、その2つの点が日本企業の強みでもあると思います。

-この2つのポイントについても生産技術者戦略会議でお話いただきます。こうご期待!!

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